> お知らせ > 【コラム】PGT-A(着床前遺伝学的検査)の現在地

― 妊娠率・流産率にどう関わるのか ―

不妊治療の高度化に伴い、「PGT-A(着床前遺伝学的検査)」という言葉を目にする機会が増えています。
特に体外受精を検討・実施している方にとっては、重要な選択肢の一つです。

本コラムでは、PGT-Aの仕組みと、そのメリット・限界について整理します。


1.PGT-Aとは何か

PGT-A(Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy)は、
胚の染色体数の異常(異数性)を調べる検査です。

通常、人の染色体は46本(23対)ですが、
この数に過不足がある状態を「異数性」と呼びます。

●例:トリソミー(+1本)

●例:モノソミー(-1本)

こうした異常は、

●着床不全

●流産

●染色体疾患

の主な原因となります。


2.なぜPGT-Aが注目されているのか(年齢との関係)

胚の染色体異常は、特に女性の年齢と強く関連しています。

・30代前半:約30〜40%が異常胚

・35歳以上:50%以上

・40歳前後:70〜80%以上

つまり、年齢が上がるほど
「見た目は良好でも染色体異常を持つ胚」が増加します。

PGT-Aはこの”見えないリスク”を可視化する技術として注目されています。


3.PGT-Aの実際の流れ

PGT-Aは、通常の体外受精のプロセスに以下が加わります。

1.採卵・受精

2.胚盤胞まで培養(Day5〜6)

3.胚の一部(栄養外胚葉)を生検

4.胚を凍結

5.遺伝学的検査(NGSなど)

6.正常胚を選択して移植

ポイントは、子宮に戻す前に染色体情報を得ることです。


4.期待されるメリット

PGT-Aには、主に以下の効果が期待されています。

■ 移植あたりの妊娠率の向上

正常胚のみを選択することで、着床率が高まる可能性があります。

■ 流産率の低下

染色体異常は流産の主要因のため、そのリスクを減らす効果が期待されます。

■ 移植回数の削減

結果的に、身体的・精神的負担の軽減につながるケースもあります。


5.知っておくべき限界と注意点

一方で、PGT-Aは万能ではない点も重要です。

■ 偽陽性・偽陰性の可能性

検査結果と実際の胚の状態が完全に一致しない場合があります。

■ モザイク胚の扱い

正常細胞と異常細胞が混在する胚の評価は、現在も議論が続いています。

■ 胚への侵襲

生検による影響は最小限とされていますが、完全にゼロではありません。

■ 日本における適応制限

日本では主に
「反復着床不全」や「習慣流産」などに限定されており、
自由に実施できるわけではありません。


6.PGT-Aは誰にでも必要な検査ではない

PGT-Aは非常に有用な技術である一方で、
すべての人に適しているわけではありません。

例えば、

・年齢

・治療歴

・胚の数

・流産歴

によって、適応や有効性は大きく変わります。

重要なのは、

自分にとってメリットが上回るかどうか

を医療機関とともに検討することです。


まとめ

PGT-Aは、胚の見えない情報を可視化することで、
治療戦略に新たな視点をもたらす技術です。

しかしその一方で、限界や倫理的側面も含め、
慎重な理解が求められます。

妊活・不妊治療においては、

「知った上で選ぶこと」

それ自体が、納得のいく選択につながります。