【理事長/院長インタビュー】亀田IVFクリニック幕張――地域とともに、継続できる生殖医療を
理事長/院長
川井 清考
千葉県で生殖医療に幅広く対応する亀田IVFクリニック幕張。 プレコンセプションケアから不育症、妊孕性温存まで、一貫したサポート体制が特徴です。 複数の専門医による客観的な診療と、心理士や看護師による相談体制で、患者様に寄り添った治療を提供しています。 今回、院の取り組みと生殖医療への思いを伺いました。
① 貴院の強みや、特色を教えてください。
当院は、プレコンセプションケアから不育症治療まで、妊娠に至る前段階から周産期へ引き継ぐまでのプロセスを一貫してサポートできる点が大きな強みです。
また、生殖医療専門医や臨床医が複数在籍し、複数名で症例を評価することで客観性と公平性を保ちながら治療を進めています。
② 導入されている主な不妊治療技術や設備について、ご紹介いただけますか?
当院は生殖補助医療(ART)に対応しており、体外受精に必要なタイムラプスインキュベーターを含む信頼性の高い医療機器を導入しています。
さらに、亀田総合病院附属 幕張クリニックとの連携により、同建物内でCT・MRIなどの検査も可能です。
一つの医療圏内で包括的な検査・治療が行えることは、患者様にとって大きな安心材料となっています。
③ 患者様が安心して治療に臨めるようなカウンセリング体制について教えてください。
心理士による相談窓口が設けられているほか、看護師・生殖医療相談士が複数名在籍しています。治療開始時や治療が思うように進まない時には、必ず話し合いの場を設け、治療方針の再確認や気持ちの整理を一緒に行う時間を確保しています。
また、治療が長期化する場合には、ご夫婦での面談も行うなど、継続して寄り添う体制を整えています。
④ 卵子凍結を希望する患者様が増えている背景と、貴院での対応状況についてお聞かせください。
千葉県では助成制度が整備されていないため件数は多くありませんが、月に1~2件程度ご相談があります。ご希望があれば、患者様の背景に寄り添いながら適切に対応しています。背景としては、社会進出や価値観の多様化、東京都や国の助成制度など、社会的認知の広がりが大きな影響を与えていると感じています。
⑤ 妊娠を希望する前の段階でのケア(生活習慣・検査・栄養指導など)について、どのように取り組まれていますか?
当院はサプリメントの多用よりも、まず日常生活の整えを重視しています。初診時には体成分測定や生活習慣のヒアリングを行い、まずは食事・睡眠・生活リズムを整えることをお話しします。
栄養に関する説明はWEB勉強会を用意し、必要な場合のみ葉酸や不足栄養素のみを補う形で最小限のサプリメントを案内しています。
また、検査についてはご希望があればビタミンDやホモシステイン測定などを行いますが、自費の診療をこちらから積極的に勧めることは行っていません。
⑥ 男性不妊に対する検査や治療体制について、貴院での特徴や工夫はございますか?
生殖医療専門医が複数名在籍しており、男性不妊外来も週に複数日対応しています。体外受精に進む前から、男性側の治療を単独または並行して行う選択肢を用意しています。
また、無精子症に対する精子採取術(TESE等)にも対応しています。
⑦ がん・生殖医療外来では、がん診療連携拠点病院との連携により妊孕性温存治療を提供されていますが、その体制の強みを教えてください。
千葉県がん・生殖医療ネットワークCOFNET(コフネット) において、生殖医療医・がん・生殖医療専門心理士 が主要メンバーとして一緒に取り組み、定期的な勉強会や情報交換を行っております。
連携の亀田総合病院が県南部を、県中、県北に関しましては当院がフォローしておりますので、千葉県の中では(白血病等で、輸血をしなければいけない場合等の特殊な症例を除いて)、ほぼ全域をカバーする形で治療を行えるようになっています。
⑧ 治療過程での心理的サポートや相談体制についてお聞かせください。
③と重複してしまいますが、複数名の医師と看護師、生殖医療相談士など様々なスタッフで関われる体制を整えています。ただし、患者様の中には、一定のスタッフと接した方が信頼関係を構築しやすいという方もいらっしゃいますので、患者様のニーズに合わせて柔軟にサポート対応できるよう心がけております。
⑨ 今後、不妊治療分野で特に注力していきたい領域や取り組みはございますか?
当院は比較的幅広く、生殖医療全般を網羅できる体制は既に整っています。今後はプレコンセプションケアや卵子凍結などのハードルが下がり身近に感じていただけるよう、正確でわかりやすい情報提供をより丁寧に行い、様々な選択肢の理解を深める支援を強化していきたいと考えています。
⑩ 千葉エリアの自治体や医療機関と連携した活動があればご紹介ください。
今現在、千葉県がん・生殖医療ネットワークCOFNET(コフネット)のメンバーであることや、2025年10月1日より千葉市で開始したプレコンセプション健診費用助成事業立ち上げの設計等にも関わらせていただきました。
私自身が千葉県で生殖医療に携わるようになってから12年ほどになりますが、自治体とは比較的近い距離間で、これまでも一緒に様々な取り組みをさせていただいています。
医療機関との連携に関しましては、千葉大学の客員研究員と非常勤講師を勤めています。また、国際医療福祉大学成田病院とは不育症に関して研究・臨床共に連携をとっている他、近隣の産院グループの職員向けの勉強会講師や相談を受けるなどもしておりますので、流死産を繰り返す不育症患者様の検査・治療の紹介先として、不育症の患者様が数多くいらっしゃいますので、系統立てた治療体制が整っていることは当院の強みであると思います。
⑪ 2025年8月1日に医療法人鉄蕉会から医療法人社団亀田会へ運営体制が変更になりましたが、その背景やクリニックにとってのメリット・今後の方針についてご教示下さい。
当院は、生殖医療にしっかりと取り組んでいきたいという思いが以前からありました。そのため、総合病院の一つの診療科としてではなく、より柔軟に方針決定のできる体制へと移行したことは、当院にとって大きな意味がありました。
昨今は不妊治療の保険適用が進む一方で、新しい検査や治療が次々と登場しています。そうした変化に対して、迅速に意思決定し、適切なタイミングで患者様へ提供できるようにしたいということが、今回の事業譲渡の最も大きな理由です。運営の移行によって、治療や組織運営に関する判断がスムーズに行えるようになりました。
また、新たにWFC(Wellness & Fertility care)グループを設立し、表参道ARTクリニックと連携し、医療のマネジメントだけでなく、患者様にわかりやすい資材づくり・体制づくりのなど、多角的に強化が進んでいます。
これにより、今後も継続的に質の高い医療を提供できる土台がさらに整ったと感じています。
もちろん、長く勤めた医療法人鉄蕉会から独立したことによる不安が全くなかったわけではありません。しかし現在も、連携・協力関係は良好に保たれており、地域医療としてのネットワークはこれまでと変わらず活かされています。
⑫ 保険適用が施行されてから数年経ちましたが、先生から見て適用化に今後組み込まれたら良いと思われる治療はありますでしょうか。
A. PGT-Aの保険適用についてはよく議論されますが、私は不育症の領域にこそ注目していただきたいと考えています。
現在、不育症に関する検査や治療の多くは自費診療となっています。
しかし、不育症は「妊娠に至るまでの不妊治療」と「妊娠後の周産期医療」のちょうど中間に位置する領域です。
周産期医療が保険適用であるのであれば、不育症に関しても、保険適用なのか、または難治性疾患としての公費医療の 位置づけなのか、いずれにせよ何らかの明確な制度設計が必要だと感じています。
今後、この領域の適切な位置づけが確保され、患者様が必要な医療にアクセスしやすい環境が整うことを期待しています。
⑬ 最後に、治療を検討している方や通院中の方へ向けてのメッセージをお願いいたします。
私たちが大切にしているのは「信頼できる医療を継続して届けること」です。
医療は、まず身近にあり続けることが大切だと考えています。
しかし現在は、医療従事者の確保の難しさや医療資源・資材の高騰などにより、必要な医療をこれまで通り提供し続けることが、簡単ではない時代になっています。だからこそ私たちは、確かな根拠に基づいた医療を、5年後も10年後も変わらず届けられる体制を目指しています。それは特定の医師個人に依存するものではなく、クリニックという組織として、誰が担っても同じ質を提供できる仕組みづくりです。
継続性と信頼性のある医療を守り抜くことが、私たちの目標です。
インタビューを通して印象的だったのは、「医療はまず身近にあり続けるべき」という力強い言葉でした。患者様が必要な時に必要な医療へ確実にアクセスできる未来をつくるために、信頼性と継続性を軸に進化し続ける亀田IVFクリニック幕張の取り組みは、今後の生殖医療において大きな指針となるはずです。
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