> お知らせ > 【兵庫県庁インタビュー】若者の未来を育む:兵庫県のプレコンセプションケア最前線

兵庫県では、不妊治療の保険適用を契機に、若い世代からの健康づくりを支える「プレコンセプションケア」を積極的に推進しています。 本記事では、兵庫県がプレコンセプションケアに注力する背景と、現場での工夫、今後の展望についてお話を伺いました。

①兵庫県がプレコンセプションケアに取り組むようになったきっかけや背景を教えてください。

兵庫県では、令和4年の不妊治療保険適用を1つのきっかけに、「当事者が抱えているのは経済的負担のみが課題なのか、精神的負担、日常の生活における負担はないのか」と不妊治療支援についての検討を開始しました。

課題の明確化と対応の検討のため、令和5年度には不妊治療支援検討会を設置、医療機関や企業など関係者へのアンケートを実施し、当事者においてはアンケートに加えヒアリングも実施しました。その中で、当事者から『もっと早く妊娠・不妊に関する知識を得ておきたかった』『若い頃から検診を受診したり、月経の異常があれば婦人科を受診したり、自身の健康体のことを十分に知っておくことが大事』等というお声をいただいたことに加えて、若いうちからの知識の啓発や健康管理の必要性について医療現場からも意見があったことを背景に、プレコンセプションケアに力を入れてきました。

②この施策に込められた県としての目的・ビジョンは何でしょうか?

プレコンセプションケアは、不妊の増加とリスクのある妊娠の増加、人生100年時代に向けた各個人の健康づくりの必要性等を背景に、その必要性が示されています。県としても、プレコンセプションケアを推進することで県民一人ひとりが健康に歳を重ねられるだけでなく、子どもを望んだときに安心して産み育てることのできる環境づくりを進めていきたいと思っています。

③特にどのような層(若者、教育現場、医療関係者など)に届けたいと考えていますか?

特に、若者世代に届けたいと考えています。だた、プレコンセプションケアを行う上で、日々の健康や生活に目を向ける必要性があることから、教育現場や地域の医療機関、保護者世代の理解も同様に必要だと思います。

④現在、県として実施されている具体的な取り組みについてご紹介いただけますか?

プレコンセプションケアについては、「プレコンセプションケア講師派遣事業」を行っています。これは県内の高校生、大学生等を対象に講師を派遣し、プレコンセプションケアに関する講義を性教育の経験を有する助産師などが実施するものです。

また、普及啓発にも力を入れており、不妊治療ポータルサイトの設立やプレコンセプションケアについての内容をまとめたタブロイド紙により「知る」「活用する」というサイクルでのアプローチを行っています。各種普及啓発媒体においては、年代によって伝える内容やアクションが異なるため、小中学生向けと高校生以上向けの2パターンを用意しています。

⑤実際の講義や教材は、どのように設計・工夫されていますか?

「プレコンセプションケア講師派遣事業」においては、実際に講義をうける学生にとっては『プレコン』『健康づくり』と聞いてもなかなか自分事にできず、「将来」「未来」といってもなかなか刺さりません。そのため、学生の記憶に少しでも残るように座学だけでなく妊婦体験や胎児・赤ちゃん人形抱っこ体験、学生同士の意見交換会などのオプションを設けているほか、講義内容も「彼氏や彼女との付き合い方」など、今の自分に当てはめることのできる内容を盛り込む工夫を行っています。

⑥学校や地域での導入の際に、特に重視されている点はありますか?

プレコンセプションケアは男女ともに関係があること、結婚・妊娠を考えていなくても関係があるということを伝えるようにしています。また、性に関する内容も含むため、実施先との事前打ち合わせを大切にし、各受講者の特性に合わせた講義を行うようにしています。

⑦これまでの取組の中で得られた成果や、参加者から寄せられた反響について教えてください。

令和6年度は44カ所、約5,000名に実施しました。講義を受講した生徒からは、「妊娠・出産はまだまだ先のことで考えていなかったけれど、今後の選択肢を増やすきっかけになったので、今知ることができて良かった」「難しい内容かと思ったけれど、学んでみると自分の未来に関係している身近な内容で、周囲との関係性や自分の身体と健康を守る大切な知識だと感じた」と前向きなコメントをいただいています。

⑧特に「理解が広がりにくい点」や「誤解されやすい点」があればお聞かせください。

プレコン=性教育、プレコン=結婚・妊娠を勧めるもの、というイメージを持たれ、取り組む上でのハードルとなっている様子が時折伺えます。性に関する内容も含んではいますが、結婚・妊娠の希望(する・しない)を含む将来を見据えた健康管理であることを知っていただきたいです。

⑨今後のプレコンセプションケアの普及に向けて、県として考えている将来展望をお聞かせください。

プレコンセプションケアを推進するにあたり、プレコン(プレコンセプションケア)という言葉の周知、県民や関係機関が情報を得て活用するためのツールの準備を行ってきました。それらの活用や持続的にプレコンセプションケアを推進できる体制づくりを引き続き実施したいと思っています。

国においてもプレコンセプションケア推進5か年計画が策定され、行政だけでなく、医療機関・企業・教育機関等に協力を仰ぎながら、周知啓発していく方針が立てられていますので、関係機関との連携を大切にしながら事業を展開してまいります。担当としては、できれば「プレコン」が「メタボ」と同じくらい浸透し、言葉だけでなんとなくのイメージが浮かぶレベル、詳しくは説明できないけれど”ライフプランに必要な概念”なのだとみんなが知っているような状態になればいいなと思っています。

⑩不妊治療の保険適用や母子保健事業など、他の制度・施策との連携について、現在どのように進められていますか?

プレコンの議論のスタートが不妊治療支援の過程であったことから、R7年7月に施行した兵庫県の条例にもプレコンの推進を位置付けて、不妊症等の支援と合せて体系的に取り組んでいます。市町・医療機関・企業・教育機関・庁内関係部門に対して、プレコンセプションケアの必要性について説明をさせていただきながら協力を仰いでおり、新規採用職員に向けたセミナーや教員向け研修会での周知啓発にも取り組んでいます。

⑪最後に、県民や社会全体に広く伝えたいことがあればお聞かせください。

プレコンセプションケアを知ると「栄養」「睡眠」「運動」「ストレス対策」等、案外あたりまえのことで構成されています。ただ、「知っている/知らない」、「やる/やらない」で将来の選択肢が変わってくることも事実です。ぜひ、県のポータルサイトや動画・タブロイド紙から必要な知識を得て、将来の自分を考えてみていただきたいです。

プレコンセプションケアは、誰もが今日から取り入れられる「未来への備え」。 兵庫県の取り組みが、一人ひとりの健康やライフプランを考えるきっかけとなれば幸いです。 FCHでは、これからも自治体や医療機関の取り組みを丁寧に発信してまいります。

【兵庫県庁インタビュー】若者の未来を育む:兵庫県のプレコンセプションケア最前線

インタビュイープロフィール

兵庫県 保健医療部 健康増進課

https://web.pref.hyogo.lg.jp/prec_care/adult/