【院長インタビュー後編】✿まるたARTクリニック✿
院長
丸田 英
スタッフ:男性不妊というワードを鑑みて丸田先生が伝えたいことはありますか?
一歩を踏み出せていないだけで、踏み出したいと思っている男性は多いと思います。
不妊治療をするのも妊娠・出産をするのも女性であるのに、恥ずかしいから検査をしないというレベルで話をする男性は意識が足りないように感じます。
女性の大変さを自覚できていない方が一定数おられるように感じます。
当クリニックでは不妊治療をする中で絶対に精液検査を最初に行います。
精子がいなければ女性の身体を調べても意味がありません。
女性の場合、採血や卵管造影検査、X線で検査を行い、危険な検査もあるが精液検査はリスクがありません。
カップルの場合男性を調べないのであれば、うちでは治療をしませんというスタイルで行っています。不妊治療は男性からスタートだということを発信し、女性から感謝をされることもあります。(自分から夫に言いづらかった等)
“知らない”ということが問題なので、セミナーを頻繁に行っています。
どのステージの人でも、知識を得て判断することが絶対に大事です。
(卵子凍結・プレコンセプションケア・不妊治療・体外受精もすべて知った上で患者様に選択してもらう)
また、精子の運動率は体調によって変わる為定期的な検査をお勧めします。
運動率が悪い場合や運動率は良いが半年間妊娠しない場合などは再検査が必要です。
精子の状態の善し悪しは簡単には判断できず、1回の検査で終了というのはリスクがあるので、何度か検査を行います。
多くの男性は射精ができれば妊娠すると思っていますが、精液検査をすると100人中4,5人は危機的な結果が出ています。
また、セミナーで話すと「検査をしたい」という男性が多いので、検査の必要性を知らせる場やチャンスがないことが問題であるとも考えています。
企業で生理休暇や不妊治療休暇を取り入れる動きは少し出てきたが、男性向けに精子の知識を発信するところへはいっていません。
根本でいえば、日本の性教育の遅れも原因の一つではあると思います。
スタッフ:最後に、丸田先生からメッセージをお願いいたします。
日本の不妊治療には暗いイメージがついてしまっています。(しんどい、費用がかかる、結局妊娠できなかった等のイメージ)
若い人たちの、自分たちが不妊症だということを認めたくない気持ちはわかりますが、然るべき治療を受ければ命が授かるという前向きなイメージを世の中に作ってほしいです。
一部、卵子凍結に関して後ろ向きの意見が多い(卵子凍結をしたとて必ず妊娠するわけではない、病気でもない身体に針を刺すのはどうなのか等)ことについてもネガティブな意見だけでなく、卵子凍結をしておくことで少なからず将来の希望を残せる話だと思います。
今の技術ではまだ不可能だが、将来的に、卵子凍結で50歳の方が妊娠できるようになる可能性を残しておくだけで素晴らしいことです。
将来的に、人工子宮で妊娠ができるようになる可能性もありますからね。
PGT-Aについてですが、保険適用については世論が大事なので患者様がPGT-Aの必要性をわかってくれて”大きな声”として届けてくれたら保険適用になると思いますが、まだまだ浸透していないのが現状です。
着床前診断にはハードルを作っていて、出生前診断は誰でもできる事こそ整合性が無いのだから統一できる世の中になってくれればと感じています。
希望としては、PGT-Aをもっと受けやすいようにしてほしいですね。
現時点では2回流産・移植に2回失敗したら受けてよいことになっているが自費診療です。
染色体異常で流産してしまう人がほとんどですので、回数括らずPGT-Aを受けられた方が、流産率が低くなり治療を受けられている方の肉体的・精神的負担を減らせるのではないでしょうか。
昨今のプレコンセプションケアについても男女ともに健康でいることを提唱しているわけですが、それは結婚前の男女が健康に過ごせること。健康的の定義:肉体的にも社会的にも精神的にも健康であることです。(WHO提唱)
妊娠・出産前に男女ともに健康でいられるための知識を得るという風に定義しています。不妊治療をしなくても済むように知ってほしいと提唱しています(丸田先生独自の考え方)
では、どういうことがプレコンになるのかといいますと、その第一段階として
女性:AMHを知る 男性:精液検査をする
将来に備えて知識を得て、自分を知る。ということです。