【生殖研究者】本橋 秀之様にインタビューしました
東京医科大学病院 疾患モデル研究センター 非常勤講師
本橋 秀之
不妊治療につながる生殖技術の研究を行っている 本橋 秀之様にインタビューを受けていただきました
スタッフ:お仕事及び活動内容を教えてください
医学生命科学分野の研究者をしています。専門は生殖生物学、生殖医学です。妊孕性や不妊啓発の発信等もしています。
スタッフ:妊活・不妊治療を取り巻く社会課題はありますか?
社会・経済構造、現代的価値観と生殖年齢との生物学的ミスマッチが主要な問題と思っています。社会経済的構造や一部価値観の転換、10代での不妊啓発や性病、ライフプランの教育、そして20代で結婚に至るための社会的、経済的支援が重要と思います。
スタッフ:不妊症かもしれないと思った時に、するべきことはありますか?
不妊の原因は多様であるため、不妊症や高度生殖補助医療を行っている医療機関を受診し現状の身体の状況を明らかにする以外に方法はないとおもいます。
スタッフ:これから不妊治療を始める方へのアドバイスはありますか?
あまり気負わないで、もし授かったら儲けものぐらいの気持ちで臨まれるのが良いと思います。その事で一喜一憂し悩むことが最も不幸な事だと思います。もし30代後半の方(以降含む)でしたらもし最終的に授からなかった場合を意識して、何より夫婦の絆、そしてこれからの人生を明るく暮らし全うするための心の準備は必要でしょう。これは運良く授かった場合でも必要な事だとおもいます。
スタッフ:改善してほしい点(例:クリニックにこうしてほしい等)
医療はサービス業で、あえてビジネス的に言えば患者は顧客・クライアントになります。ビジネスでは顧客の方が常に立場が上です。不妊治療では顧客が命を授かるためのお手伝いをするわけですから、医師はそこに十分配慮した上で常に誠実で丁寧な対応をする必要があるかと思います。
スタッフ:不妊治療の保険適用についてどう思われますか?(期待や改善点等あれば)
保険適用は必要であったと思います。それ以前から助成金制度などはありましたが、イメージ的に受診しやすくなった面はあると思います。一方で、患者さんにとってあまり有効でない治療が選択される可能性などもあり、メリットデメリット両面あると思います。制度やその運用は人が定めて行っているものですから、改善が可能です。改善点は修正していき現状よりもさらにより良いものにしていく必要があると思います。
スタッフ:プレコンセプションケアについてどう思われますか?
重要なことだと思います。この概念自体はまだあまり知られていないようです。②の回答にも通じますが、社会的成熟年齢と生物学的生殖年齢のミスマッチが起きているのが現在の社会ですので、そもそも今の社会のあり方や我々の価値観も含めて幅広く議論していく必要があると思います。
プレコンセプションケアとしては、早くから生殖医療に接するというよりも、不妊や妊孕性に関する正しい教育や正しい啓発が重要と思います。また、患者と医療提供側のベネフィットは必ずしも常に一致するわけではありませんので、プレコンセプション段階では医療提供側の商業主義に陥らないような形でのケアが重要とも思います。
スタッフ:自由回答(思うことやお伝えしたいこと)
最後に付け足すとすれば、不妊治療の現場では、最終的にお子さんを授からない患者さんの方が実際には多いですから、そのような場合の代替手段として、養子縁組制度をもっと柔軟なものにし、アプローチしやすくする必要があると思います。日本だけでなく世界には身寄りのない不幸な赤ちゃんや子供達がたくさんいるのですから、国際養子縁組も含め、柔軟に整備していく必要があると思います。