“仕事と不妊治療の両立““年齢制限“、新たな課題~2~
山王病院リプロダクション・婦人科内視鏡治療部門長
国際医療福祉大学大学院生殖補助医療胚培養分野教授
堤 治
不妊治療の保険適用に感謝、しかし新制度の設計に盲点は付き物~1~の続きです。
スタッフ:不妊治療を行っていて嬉しかったことや印象的だったことをお聞かせください。
ご存じのように、不妊治療の保険適用には年齢制限があります。43歳以上の方には保険は適用されません。20代~30代といった若い世代が「43歳までに妊娠・出産を考えよう」とポジティブなメッセージととらえられることに異議はありません。しかし、不妊治療の現場医師としては、43歳以上の女性が、「43歳を過ぎたから妊娠は諦めたほうがいいかもしれない」とネガティブなメッセージとして受け止めてしまわないかと危惧、懸念を持ちます。
年齢が40歳、43歳とあがるにつれ不妊治療の成績は低下するのは事実で、治療も標準的なものより質を上げ、治療回数も増加する傾向があり、逆に妊娠した場合の流産率は増加します。いわゆる費用対効果から年齢制限はやむを得ないと理解できますが、しかし年齢により初めから子どもを諦める必要は必ずしもないと考えます。
何年も体外受精に取り組んできたカップルに女性が43歳を迎えるのを機に治療の中断やステップダウンの検討を勧めることはあります。しかし43歳で結婚し挙児を希望して来院する初診の患者様には山王病院の具体的治療成績を示し流産や児の染色体異常の頻度を含めた予後を示し、希望があれば「今でしょう」とその日から不妊治療に取り組みます。私が産科医として出産に立ち会う約半数が不妊治療で妊娠された40歳以上の方で43歳以上も相当数を占めております。妊娠初期から十分な管理を行い大きな周産期のトラブルは経験していません。諦めていたら生まれなかったお子さんを取り上げて産婦さんに「よく頑張りましたね」と申し上げるのは産婦人科医として至福の時なのです。
スタッフ:最後に弊社運営のポータルサイトへのご要望がございましたらお聞かせください。
たくさんの類似したサイトがあり患者様もどれが良いのかわからないと思います。とにかくしっかりとしたエビデンスにも基づいた正しい事実等を掲載して欲しいと思います。
日本の性や生殖に関する教育や社会の中での知識や正しい情報は海外に比べてまだまだですので、幅広く足りないところを埋めていく作業をしていってください。