> インタビュー > 【不妊治療当事者インタビュー】うに様

ツイッターで不妊治療を題材に漫画を描かれているうに様にインタビューに答えていただきました。

スタッフ:不妊治療の経緯を教えてください。

不妊治療は2017年の6月から2022年の6月まで行いました。29歳から34歳まで、きっかり丸5年です。
すぐにでも子どもが欲しかったので、結婚してからすぐに半年間の自己タイミングを行いました。
半年経ってもできないので、不妊治療クリニックへ行くことにしました。どうも変だぞと感じていたので、はじめから口コミ評価の高い専門のクリニックへ行きました。
タイミング法を3周期、人工授精を2周期行いました。検査でAMHが低いことがわかり、焦っていたので、タイミング法と人工授精は少ししかしませんでした。
その後体外受精で採卵を3回、移植を1回。顕微授精で採卵を6回、移植を6回(2個移植を2回したので、移植した個数は8個)しました。9個の卵のうち胚盤胞になったのは最後の1個だけで、あとは全て初期胚で移植していました。
最後と決めた移植で妊娠して、今継続できています。

スタッフ:不妊治療を始めるきっかけは何ですか?

もともと子どもが欲しいという気持ちが強く、パートナー選びも「いい父親になれるかどうか」が基準の一つなほどでした。
そして「35歳までに産み終える、子どもの数は2人」と結婚前から決めていました。なので、半年の自己タイミングでできないのはおかしい、このまま時間が経ってしまうと家族計画が予定通りにいかなくなると感じ、不妊治療をはじめました。

スタッフ:かかった費用はいくらくらいでしょうか?

700万円弱です。

スタッフ:不妊治療をしていて辛かったことはありますか?

いろいろあります。
治療をはじめて1~2年目は、とにかく周囲と比べてしまうことが辛かったです。
大好きな友人の妊娠・出産でさえも「羨ましい」「私はこんなに苦労しているのに」と妬むような気持ちが出てしまい、100%幸せな気持ちでお祝いができないことが本当に辛かったです。
お祝いしたい気持ちは確かにあるのに、嫉妬の気持ちが消えてくれないんです。自分が醜く、酷い人間になってしまったと何度泣いたかわかりません。辛かったです。

3年目以降は、人と比べることは少なくなりましたが、自己肯定感がとにかく低くなりました。
子どもを産み育てるということが生き物として基本のサイクルなはずなのに、それに参加できない自分は生きている意味があるのか?私と結婚しなければ夫は幸せな人生を送れたのではないか?と何度も自死を考えました。
自分の腕を傷付けたり、お腹を殴ったり、首を絞めたりと自傷行為もしてしまいました。そんな気持ちから逃げるためにお酒を浴びるほど飲み、妊活のために辞めていた煙草も吸ってしまいました。
この時期は本当に、毎日が地獄のように辛かったです。

スタッフ:パートナー様やご両親、友人、職場の方々との関係はどういった感じでしたか?

夫との関係は良好でした。
夫は穏やかな性格なので、私が精神的に落ち込んでいたり、夫に当たってしまうときものんびりと側にいてくれました。
その対応が、必死な私との温度差のように感じて辛かったこともあります。しかし、今振り返って考えると、二人そろって精神的に弱ってしまうともうどうしようもなくなっていたと思うので、夫はあれでよかったと思います。
初期は不妊治療に関して夫は完全に受け身で、私が調べてきたことを聞くだけ、時にはどのような治療をしているかあまりわかっていないということがありました。そのような時に、私の怒りが爆発して一方的に責め立てるということが何度かありました。
治療が終わりに近づくにつれ、頼んでなくても一緒に診察について来てくれたり、新しい治療法について調べたりすることが増えてきて嬉しかったです。
夫は結婚する前から今まで一貫して「子どもはどっちでもいい」という立場で、もともとは「治療してまでいらない」派でした。
なので、私の気持ちを尊重してここまでさせてくれたこと、ずっと支えてくれたことに感謝しかないです。

両親は応援してくれていました。
母親はやはり気になるようで、色々聞きたそうにしていましたが、遠慮しているのも感じました。私の気持ちが落ち着いているときは治療状況などを話していました。
父親は治療の話をしてくることはほぼありませんでしたが、妊娠したことを告げると目をうるませて「がんばったな」と言ってくれて、本当は心配してたことを知り嬉しかったです。
義両親は結婚してからいままで孫を急かされたことが一度もありませんでした。
体外受精にステップアップしたときに不妊治療をしていることを打ち明けました。「無理しなくていいからね、2人が楽しいのが一番だからね」と優しく見守ってくれていました。

友人には本当に救われました。
詳しく治療状況を話しているのは信頼している数人のみですが、いつも励ましてくれたり、褒めてくれたり、時には一緒に泣いてくれたりしながら話を聞いてくれました。
生理が来たらお酒に付き合ってくれたり、治療スケジュールに合わせて旅行の日程を組んでくれたりと気晴らしに付き合ってくれました。本当にどれだけ救われたかわかりません。
しかし、逆に不妊治療をしていることを話したせいで疎遠になった友人もいました。陰で馬鹿にされていました。

職場では、同じ部署の人はほぼ私が治療をしていることを知っていました。
治療のために休みを急にいただくことが多かったので、話していたほうがいいと思ったからです。
ほとんどの人は不妊治療について話題にすることはありませんでした。たまに相談を受けることもありました。
数人、根掘り葉掘り明らかに興味本位で聞く人や、「これをすればいいあれをすればいい」と根拠のない民間療法のようなアドバイスをくれる人がいたので、めんどくさいな~と本音では思っていました。笑

スタッフ:これから不妊治療を始める方に何かアドバイスはありますか?

私は5年間の不妊治療の中で後悔していることが2つあります。
まず一つは診察の度にメモを取っていなかったこと。
特に初期は初めて聞く言葉が多かったり、うまくいかなかった時にショックを受けて話が頭に入ってこなかったりします。
診察の時は理解できていたつもりでも、あとでぼんやりとしか思い出せなかったり、間違って理解していたり……なんてことがたまにありました。
最後のほうは必ずメモを持っていき、先生の説明をメモに書いて、診察の最後に自分なりに要約して合っているか尋ねていました。
あとから疑問点が出た時も調べやすいので、メモは本当にオススメします。

もう一つは一番辛かった時に、精神的に辛いということをクリニックで相談しなかったり、カウンセリングを受けなかったこと。
自死を考えるほどに精神的に弱っていたのに、(不妊くらいでカウンセリングなんて受けちゃいけない)、(カウンセリングなんか受けてもなにも変わらない)と思っていました。
ただでさえ辛い不妊治療を、自分でさらに辛い状況にしていたと思います。仕事にも影響が出ました。
治療をもうやめようと思ったときに、ピアカウンセラーさんのカウンセリングを受けて、とてもスッキリしました。自分の考えがまとまった感じがしました。
プロの方に話を聞いてもらうことと、家族や友だちに話を聞いてもらうこととは違うんだなぁと思いました。
なので、辛いと感じたら無理せず、プロの力を頼って欲しいと思います。

スタッフ:改善してほしい点などあればお願いします(例 クリニックにこうしてほしい、治療をしながらもっと自由に働ける職場がほしい)

待ち時間が長いので、もう少し短くなってくれればなぁ〜と思ったことは何度もあります。
あと、お値段が高いなぁ〜とも……。笑

スタッフ:不妊治療の保険適用についてどう思いますか?(期待や改善点等あれば)

良かったと思います。
国が不妊治療に目を向けてくれて、とても嬉しいです。
世間にも不妊治療はおかしいことではないと広まるきっかけになると思います。

そして3割負担になれば、いままでお金の問題で治療ができなかった方も治療しやすくなると思います。
実際保険適用されてから患者さんが増えたとクリニックの方が言ってました。私も、若い患者さんが増えたなぁと感じました。
しかし適用外の治療を受けると全て自費になってしまうところは辛いです。
私は保険適用外の治療法をしていたので、いま治療するなら全て自費になります。
ありがたいことに、私は助成金を全て使わせていただきましたが、まだ治療途中の方や今から治療される方は保険適用外治療を行っても助成金がもらえないです。
保険適用の範囲が広がるか、助成金と併用できるともっといいのになと思います。

昔に比べると、助成金がもらえるようになり、増額になり、保険適用になり……と、どんどん良くなっているように感じます。
まだはじまったばかりで、色々ややこしそうですが、もっと良くなると信じています。ありがたいことです。

不妊治療に携わる方たちの環境がもっとよくなりますように。
そしてFCHさんにおかれましては、そのためにご尽力くださりありがとうございます。
今回はお声掛けいただき、ありがとうございました。

インタビューにお答えいただきありがとうございました。

【不妊治療当事者インタビュー】うに様

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