> インタビュー > 『不妊治療の経済的負担を軽減し、子供を望む方が治療に取り組める環境にしたい』~1~

自民党「不妊治療支援拡充議員連盟」事務局長  参議院議員 和田政宗先生にインタビューさせていただきました。

スタッフ:和田さんは、自民党内に不妊治療への支援拡充を目指す議員連盟を立ち上げ、不妊治療の保険適用に向けた動きの中心となられました。なぜ、保険適用への動きを始めたのでしょうか?

まず、私自身が不妊治療の経験者だということがあります。妻と私は同い年で、33歳から不妊治療を開始し、初めはタイミング療法や人工受精を行いました。しかし、子供を授かることが出来ず、その後、体外受精に進み、36歳直前で第1子を授かることが出来ました。
そして、第2子も不妊治療で授かりましたが、子宮外妊娠を経験し、第2子を授かるまでには約4年かかりました。2人の子供の不妊治療でかかった費用は合計400万円です。私どもはコツコツとためていた貯金を切り崩して何とか払うことが出来ましたが、貯金は全て無くなりました。こうした経験をし、普通に働いている方が不妊治療に取り組み、体外受精、顕微授精に進むことは、経済的に難しいのではないかと感じ、保険適用への動きを始めました。

スタッフ:なぜ、不妊治療への支援として保険適用を考えたのでしょうか?

まず、不妊治療の費用がなぜ高額になるのかを調べましたが、不妊治療のクリニックが大きな利益を得るために高額にしているということではないことが分かりました。妊娠率を上げようと最新鋭の機器を入れたりすると、機器の中には1台1億円を超えるものもあり、治療に関わるクリニックの運営経費が高額になり、治療費も高額になっているということが分かりました。
 であるならば、クリニックの自助努力によって治療費を下げるといっても限界があり、公費によって支援を拡充し、将来的に保険適用を目指すしかないと思いました。保険適用となれば、高額療養費制度も使えますので、治療費負担が抑えられると考えました。

スタッフ:不妊治療の保険適用は当事者の悲願でしたが、なぜこれまでは進まなかったのでしょうか?

実は、私がまだ政治家になる前、放送局で働きながら不妊治療に取り組んでいる時に、雑誌のインタビューにご自身も不妊治療の経験者であった枝野幸男衆院議員が「民主党が政権を取ったら、不妊治療の保険適用を実現する」と答えていて、期待をしましたが実現されませんでした。大いに失望をしましたが、民主党政権でも不妊治療への支援拡充は一定程度なされました。
 私は2013年に国会議員になってから、実現を目指し国会質疑で取り上げたり、省庁への働きかけを行いましたが、当時は野党所属でしたので実現することができませんでした。
 2017年に自民党入りしてからは動きを強めました。与党であるから実現ができるわけで、政府の年度方針に「将来は不妊治療を保険適用とする」という文言を盛り込むことが出来ました。しかし、なかなか自民党内がまとまった動きとならないことから、この問題に取り組んでいる先輩方にお会いし、ヒアリングをしました。すると分かったことは、各先輩方が少子化担当大臣などになった時に、それぞれが取り組んで一歩一歩、支援拡充が進むものの、その方が大臣から後退すると動きが弱くなってしまう。雑巾がけをする、思いを持って取り組んでいる方々を事務的に支える存在が必要だと思い、私は自民党内に議員連盟を立ち上げて、自分が事務局長として汗をかこうと思いました。そして、2020年に自民党「不妊治療への支援拡充を目指す議員連盟」を立ち上げることができ、会長に甘利明衆院議員、幹事長に野田聖子衆院議員、そして私が事務局長に就任し、活動がスタートしました。

スタッフ:それからどのように保険適用が実現となったのでしょうか?

議員連盟が立ち上がってからは、2週間に1回のペースで議連を開催しました。クリニックの先生方や専門家、当事者団体からヒアリングを行いました。議連の考え方は、「まず当事者の負担軽減、そして不妊治療技術の発展」でした。そして、2020年6月末に当時の菅義偉官房長官に第1回の要望書を提出しました。要望書の内容は、「保険適用を目指し、それまでの間は助成金大幅拡大」で、要望書を受け取った菅官房長官は「これは絶対に実現したいよね」とお答えになりました。
 そうしたところ、その年の8月に当時の安倍晋三総理が体調を崩し退陣するということになり、菅官房長官が自民党総裁選立候補することになりました。私は菅陣営の総裁選の選挙対策本部の広報統括を務めていて、総裁選が始まる日の前日に菅事務所に詰めていたところ、菅官房長官から「和田さん、執務室に入ってください」とお声掛けがあり、部屋に入ったところ、「明日の総裁選所信表明演説で、当面やるべき三本柱のひとつとして、不妊治療の保険適用を表明しますから」とのお話があったのです。
 私は身体が震えました。不妊治療の当事者にとって20年来の悲願だった保険適用が実現するのだと。翌日、総裁選で菅官房長官が表明をすると、SNSでどれだけつぶやかれたかがわかる「Yahooリアルタイム検索」で24時間以上も、不妊治療の保険適用に関連するワードが上位を占めました。不妊治療保険適用への国民の期待の高さを、菅義偉総裁候補も想像以上の反応だと驚いていました。そして総裁選を勝ち抜き、内閣総理大臣となりました。
 新内閣発足後、すぐさま菅内閣の方針として不妊治療の保険適用が明示されます。我々は、議員連盟を中心に、厚生労働省の皆さんと保険適用に向けた制度設計に取り組んでいくことになります。

2に続く

『不妊治療の経済的負担を軽減し、子供を望む方が治療に取り組める環境にしたい』~1~

インタビュイープロフィール

自民党「不妊治療支援拡充議員連盟」事務局長  参議院議員

和田 政宗

https://www.wadamasamune.net/