『保険適用は患者様にとって凄いこと。現場の準備は大変だが、理解促進に努めたい』
杉山産婦人科 院長
杉山力一
菅義偉総理大臣が決断をして実現した、不妊治療当事者にとって30年来の課題であった不妊治療の保険適用。 クリニックの現場の医師として、菅総理に繰り返し制度設計について進言してきた杉山産婦人科の杉山力一さんに、当サイトFCHがお話を聞きました。
スタッフ:杉山さんは不妊治療の保険適用について、菅義偉総理大臣から繰り返し助言を求められるなど、保険適用までの動きの中で大きな役割を果たされました。4月1日に保険適用が始まるにあたって、どのような思いを今お持ちですか。
私は、菅義偉総理の「やる」っていう思いに凄く同意をさせていただいて、一生懸命、総理が思うように頑張ってきたつもりです。不妊治療に取り組む方の困難を改善したいという菅総理の強い思いに賛同してのことです。
ただ、まさかこんな短期間でこの制度が確立されるとは正直思っていなかったので、菅総理の決断は凄いなあっていう思いと、現場の正直な感想としては、間に合わせるために準備が大変だという思いもあります。
スタッフ:杉山さんをはじめとした医師も、不妊治療の当事者も、まさかこんなにスピーディーに進むとは思っていなかったと言う方が結構いらっしゃいますので、現場は準備が大変なのだと思います。 それでも、杉山先生は不妊治療の保険適用は、大きな意義があるからこそサポートされたのだと思います。意義についてはどのようにお考えですか。
患者様にとっては保険適用っていうのは凄いことです。入り口が柔らかくなって、クリニックにかかりやすいとか、費用が安くなるとか、凄いことだと思います。あとは、今までは自費診療だったので、あんまり制限がなく、やりたいことをやれたっていうところがあるところをどうするか。今回保険適用になりますと、やっぱり厚生労働省とか国のルールがありまして、これはだめだよとか、これはいいよっていうのが複雑にあります。これまで当たり前のことができなかったり、意外とだめだっていうことができたりします。厚労省から下りてくる文章も理解するのに難しすぎて、やっぱり過渡期なのかと。4月、5月はスタートなので試行錯誤が続くと思います。
スタッフ:当事者にとって、保険適用は不妊治療に挑戦しやすくなりますか。
患者様は、特にこれから初めて不妊治療をなさる方は、やっぱり保険適用ってなると病院に行きやすいとか、費用が安くなるっていうことに関しては、素晴らしい施策だと思います。
ただ、今まで不妊治療に取り組まれてきた方は、これまでの自由診療での状況を知っているので、はいじゃこれできるんですか?これできないんですか?っていうことを理解するまでの混乱はあると思います。
ただ、これは数か月たてば必ずスタンダードというものは出来ますので、我々はそれを目指して、数か月たてば「良い施策なんだな」というように理解してもらえるようにしたいと思っています。
スタッフ:クリニックの現場ではどんな準備を進めていますか。
現場は、この一ヶ月間、毎日会議をして、厚労省から来た文章を読んでですね。ただ、読み方によっては回答が〇だったり×だったりということがありまして、やっぱり過渡期なんで、これがいいのかダメかっていう答えも無かったりすることもいっぱいあります。現場はとにかく保険適用になることを前提でやっているんですけれども、現場の中でも、何でこれがダメで、何でこれはいいんだとかという意見がいっぱいあります。
現場で割り切れない人たちは、「保険診療はダメだ」とか言って、自分たちは自費でやるっていうクリニックもありますけど、ちゃんと理解すれば良い施策だと思っています。
スタッフ:杉山先生は、不妊治療クリニック100か所以上からなる不妊治療保険診療研究会を3月に立ち上げられました。この研究会を結成した思いでありますとか、研究会の今後というのはいかがでしょうか?
この研究会はやっぱり菅総理が保険適用する、というところにもちろん同意させていただいて、微力ながら私なども参加させていただいたんですけれども、保険診療というのはいいと思ってやっても、厳密にこれはだめだとか、あれはいいとかっていうことが、やっぱあるんですね。
それを、理解したつもりになって医療をしたくないというのが正直ありまして。日本全国で共通の認識を持って、これはできる、だめなものはだめ、ということをやれる医療をスタンダードにしたいっていう思いで、みんなが集まって研究会っていうのを立ち上げました。みんなでちゃんと勉強して。これはダメだ、これはいいというのを医師の中でもちゃんと認識しようっていう経緯で、研究会を立ち上げたというのがあります。
スタッフ:不妊治療の将来の発展について、保険適用になるということに関してどのように考えますか。
保険適用というのは、国と国民が良いと思ったことをやるっていうことがベースになると思います。健康保険の保険料払っていらっしゃるわけですから、国民全体が不妊治療のためだけに保険料を払っているわけじゃないというのを認識しなくてはならないという面もあります。
だから、新しい医療とか最先端の医療はやりにくくなるかもしれないというのは正直あります。でも、将来的にどっちが正しいかっていうのは正直分かりません。まだ保険適用にならない最先端の治療をやりたいっていう方が、自費でやりたいとかあるかもしれませんけれども。じゃあ、それが本当に良い治療なのかというのは、皆様がジャッジして頂いて、私達もちゃんと論文書いたり、研究発表したりして、保険適用と併用できる先進医療にも組み入れたりして、患者様の思いとこれからの少子化に役立つことが出来ればいいかなと思います。
スタッフ:最後に我々が立ち上げた、不妊治療保険適用専門サイトFCHについて、要望であったり、期待というものがありましたらお願いいたします。
はい。不妊治療については、いろんなサイトとかが正直あるんですけれども、いろんな情報があったり、自分たちの思いを書くサイトがあるんですけれども、今回のサイトは不妊治療の保険適用について、きちんとした正確な情報を発信するというところに賛同しました。私たち保険診療に賛同する者としては、きちんとそこに魂を集めてですね、良いことと、ダメなことはダメという、日本中でやっぱりコンセンサスを取っていきたいということがありますから。時間がかかるかもしれませんけど、いいサイトを構築していただければと思っております。私はサイトの趣旨に賛同させていただき参加したいと思っております。