> インタビュー > 【不妊治療体験談】もみ様*抗セントロメア抗体と向き合って

もみ様に不妊治療体験談をお聞かせいただきました。

スタッフ:不妊治療の経歴を教えてください

2022年4月 都内不妊治療専門クリニックS 通院開始(保険診療) 
 2022年6月〜2023年9月 タイミング方2回、体外受精1回、顕微授精6回
2023年9月 都内不妊治療専門クリニックN 通院開始(自費診療)
 2023年11月〜現在 顕微授精9回

結果として、未だ正常受精せず卵子凍結も移植も出来ていません。
抗セントロメア抗体という抗核抗体が1280倍以上で、未熟卵や異常受精が起きやすく、正常受精に至るのには難易度が高いという状態です。

スタッフ:不妊治療を始めたきっかけは何ですか?

結婚前にブライダルチェックをしてAMHが低いことが判明しました。
それに加えて、結婚後半年経っても自然妊娠に至らなかったため、年齢も30代後半だったこともありリミットを考えてクリニックにて本格的に検査を実施しました。

スタッフ:掛かった費用はいくらぐらいですか?

保険診療:約500,470円
自費診療:約2,329,117円

スタッフ:不妊治療をしていて辛かったことはありますか?

大きく3つあります。

1、仕事をしながらの通院
社長秘書と兼務して人事部に所属しています。通院で休みを取る日は、仕事の調整や上司やチームメンバーへの引き継ぎなどが自ずと発生しますが、内診検査によって分かる卵胞の育ち具合に合わせて次回の通院日が決まるので、通院スケジュールが読めない上に短期間で頻繁にお休みをせざるを得ないので大変でした。
幸いにも社長の理解があって、快く不妊治療に挑ませてくださって業務の融通を利かせていただいたりと有り難い環境におりました。反面、私だけ「特別扱いだ」と良くは思わない方もいたため、顔色を伺いながら何度も頭を下げてお休みするのは積み重なると辛かったです。

2、治療費が高額なこと
クリニックに通い始めて最初の1年半は、保険適応になったことでとても助かっていました。私の勤務先の健康保険は「関東ITソフトウェア健康保険組合」なので、月に2万円以上の保険適応の医療費は返却されていたので、最大でも一桁で済むことで安心出来ました。それでも、保険適応外の処置(タイムラプス費用)は自費であり、高額だったので家計を圧迫しました。
私の場合、抗セントロメア抗体が陽性なので、採卵した後の受精卵を培養する培養液が特殊のものでないと正常受精は難しいと言われていて、それ以外は保険診療と変わらないにも関わらず混合診療が認められていないが為に、今は全て自費での治療をしています。毎月約3,40万の治療費がかかって、このまま治療を続けなければならなかった場合、将来が不安になることもあります。

3、周りの妊娠報告
同じく不妊治療をしている友人や同僚が先に妊娠報告をしてくれた時も精神的に辛かったです。本当は喜ばしいことなのに自分が妊娠しないことに焦って心の中で僻んでしまったり、そういう自分が嫌になりました。
「早く子供産みなよ」「あの人はすぐに妊娠したみたいよ」と何気ない一言でも過敏に反応して内心ではとても傷つきました。今でも街で同世代のママを見たり、有名人の妊娠・出産のニュースを見ると羨ましくも悔しくもあります。その度に心が揺さぶられています。

スタッフ:パートナー様やご両親、ご友人、職場の方々との関係はどのような感じでしたか?

<夫>
夫は、献身的にサポートしてくれています。病院への付き添いや家事を全て請け負ってくれたりと物理的サポートもしてくれます。何よりも有り難いのは、夫自身も治療費を稼がなければと負担があったり、父親になかなかなれない悲しさを抱えながらも、前向きな言葉で励まし続けてくれて、精神的にもサポートをしてくれていることです。これまでの不妊治療の間には私が取り乱したこともありましたし、2人で涙を流した日もありました。結婚当初よりさらに絆が深まりました。

<両親>
私の両親も、夫のご両親もとても温かく見守ってくれています。「授かりものだから」と焦らせることもなく、いつでも家族が一緒についているよと心強い応援をしてくれています。母は特に支えてくれていて、通院の日には毎回神社でお参りをしてくれたりと、私の望みが叶うことを心から願ってくれています。

<友人>

友人は、同じ境遇の友人が多かったので不妊治療を始めた当初は、お互い励まし合って情報交換などをして支え合っていました。今は先にママになった友人が多くお互い気まずさを感じて距離を置いています。早く私も妊娠報告をして先輩ママに育児について学ばせてもらいたいと思っています。

<職場>
職場の方たちは、先ほど④で書かせていただいた通り、社長はとても親身になってくださり、励ましてくださっていました。女性の上司は、同じく不妊治療を経験した方ですが「私の時は働きながらの治療がもっと大変だった。会社に迷惑を掛けない不妊治療をしたら?」と言われたりと、辛辣な言葉を浴びせられることもありました。

スタッフ:これから不妊治療を始める方へのアドバイスはありますか?

2つあります。

1、現実的なアドバイス
すぐに結果が出ない場合、セカンドオピニオン的に他のクリニックを受診してみることも有効だと思います。
私の場合、抗セントロメア抗体が1280倍以上でそれが妊娠の妨げになっていると判明したのは、不妊治療を始めてから約半年後です。それまでは原因不明不妊だと言われていました。判明してからは、通っていたクリニックでも検査だけした他院でも、何か治療法はないか相談しましたが、出来ることは特にないと言われ続けました。
その後、たくさんの文献なども読んで現在は、抗セントロメア抗体に対する研究を行っている医師を見つけて診ていただいています。まだ妊娠には至っていませんが、正常受精を1度もしていなかった私がつい最近正常受精できた卵胞もありました(成長が止まってしまいましたが)。まだ妊娠していないので正解かは分からないけれども何もしないより、出来ることをした方が良いと個人的には思うので、1人の医師に従うのではなく複数の医師の意見を聞くことが重要だと思います。

2、精神的なアドバイス
もしかしたら、私のように長い戦いになるかもしれません。でも諦めないで欲しいです。辛いこと、悲しいことで自分が飲み込まれそうになる日もあるかもしれません。身近な人に攻撃的になってしまったり、落ち込んで前を向けない日も来るかもしれません。でもそんな時くらいは立ち止まって、思い切りだらだらして自分を甘やかしてあげて欲しいです。そうやって、バランスを取りながらできる限り穏やかに不妊治療に挑み続けて欲しいです。

スタッフ:改善して欲しい点はありますか?(例:クリニックにこうしてほしい、治療をしながらもっと自由に働ける職場がほしい等)

<クリニック>
クリニック間で連携を強めて欲しいです。クリニックによって方針が違ったり、医師によって研究していることや得意分野は異なるとは思います。ただ、⑥でも書いたように最初に抗セントロメア抗体陽性と判明したタイミングで、自院での治療が難しくても研究している医師がいるクリニックを紹介してくれていたら、もっと早くに別角度でも治療が出来ていました。全ての医師に研究を求めたりはしないので、せめて情報は持ち合わせていて欲しいです。

<職場>
不妊治療をしている人が肩身が狭い思いをしないようなルール作りや雰囲気作りをしてもらえたら嬉しいです。私の勤務先では認められていないのですが、不妊治療での休職制度も充実させて欲しいです。

スタッフ:不妊治療の保険適用についてどう思われますか?(期待や改善点等あれば)

保険適用になったこと自体は、とても感謝しています。ただ、保険適用の処置の範囲を広げて欲しいです。または、混合診療を認めて欲しいです。
上記の④でも書いた通り、私の場合特殊な培養液を使う為、例えその周期の採卵で受精卵が採れずに培養が出来なかったとしても、全ての治療費が保険適応外の全額負担になっています。培養液以外は保険適用で行っている治療と何も変わらないのにです。
心から子どもを望んでいるからこそ、精神的にも金銭的にも苦しい中でも歯を食いしばってクリニックに通っている人が、保険適用での治療が出来ないからと諦める世の中はとても悲しいと思います。

スタッフ:プレコンセプションケアについてどう思われますか?

良いと思います。自分の体と向き合って将来後悔しないように若いうちから意識をするのは大切だと思います。

スタッフ:自由回答(思うこと・お伝えしたいこと)

長い間不妊治療専門クリニックに通っていますが、周りを見渡すと同じ顔ぶれだったりします。毎月毎月早朝からクリニックに通って、忙しそうに帰って行きます。疲れた顔の人も少なくないです。そこにいる人皆さんが心の底から子どもを授かることを願っているんだと感じます。もちろん私もそのひとりです。
今すでに生まれているお子さんもとても大切だと思います。でも授かりたくてもまだ授かれていない、授かるために日々努力をしている人にも、もっと目を向けて貰えたら嬉しいと思います。

インタビュイープロフィール