> お知らせ > 【コラム】待ち時間の解消と働きやすい環境づくりを両立するために ~不妊治療クリニックの現状と未来~

不妊治療を受けている患者さんにとって、「クリニックでの待ち時間が長い」という悩みを抱えている方は少なくないと思います。

予約をしているのに、なぜこんなにも待たされるのか?その不満がストレスとなり、治療に対する意欲や信頼感にも影響してしまう。そんな声が多く聞かれます。

 

一方で、クリニック側もこの問題を十分認識しています。

しかしながら、ただ人を増やせば解決する問題ではありません。医療従事者の働く環境や負担を考えると、無理に人員を増やすことが運営に悪影響を及ぼすケースも多いのです。

そこで、今回は「待ち時間の要因」と「改善策」について、患者さんとクリニック双方の視点から考えてみたいと思います。

 

なぜ待ち時間が長くなるのか?

まず原因を整理してみましょう。

患者さん側では、診察スケジュールが個々の治療内容によって変動するため、想定通りの進行が難しいことが挙げられます。

また、どうしても予約が集中する時間帯が生じることも、待ち時間を長くする要因です。

クリニック側では、スタッフ数が足りていないことや、緊急対応が必要な患者さんへのケアが突発的に発生することが大きな要因です。

さらに、診察に要する時間の見込みと実際がずれてしまうことも、結果として待ち時間を長引かせてしまいます。

 

どうやって解決できるのか?

待ち時間の解消には、患者さんとクリニックの双方が取り組むべきポイントがあります。

例えば、患者さん側では次のような取り組みが考えられます。

 

予約管理の改善
AIを活用したシステムで、診察スケジュールや待ち時間の予測を行う仕組みを導入すれば、患者さんも事前に時間を把握できて、ストレスが軽減されるでしょう。

●オンライン診療の活用
初診以外の診察や相談をオンラインで済ませられるようにすれば、クリニックの混雑も減ります。

●予約ルールの整備
時間厳守やキャンセルポリシーを明確化することで、スケジュール管理がしやすくなります。

 

一方で、クリニック側も工夫が必要です。

例えば、電子カルテや問診票を事前入力する仕組みを活用すれば、診察準備の時間を短縮できます。

また、短時間診察枠と長時間診察枠を分けることで、効率的に患者さんを診察することも可能です。

さらに、スタッフの労働環境の改善も重要です。

例えば、非常勤スタッフやパートの導入で負担を分散させることや、メンタルケアの取り組みを行うことで、働きやすい職場を作ることができます。

 

国や自治体に求められる対応、制度と支援の拡充で不妊治療の質向上を目指す

不妊治療クリニックの待ち時間問題やスタッフの働く環境を改善するには、クリニックや患者さんの努力だけでは限界があります。

国や自治体の政策的支援が必要不可欠です。以下に、その具体策をいくつか挙げます。

 

①不妊治療クリニックへの運営支援

中小規模の不妊治療クリニックでは、先端技術の導入や人件費の確保に苦労している現状があります。

これを補うための具体策としては、以下が考えられます。

・AIやICTシステム導入への補助金提供
AIを活用した予約システムや診察効率化ツールの導入を支援する補助金を設けることで、クリニック運営の効率化を支えます。

・スタッフ雇用支援
医療従事者や事務スタッフの雇用維持・拡充のために、一定の条件を満たすクリニックへの補助金を提供します。

・地域差を埋める支援策
特に地方の不妊治療クリニックでは、都市部と比べて人材や設備の不足が顕著です。自治体ごとの支援策に加え、国としての統一的な支援プログラムが求められます。

 

②労働環境改善に向けた法的整備とガイドライン

医療従事者の長時間労働や過労が問題視される中で、不妊治療分野にも特化した労働環境改善が必要です。

・勤務時間に関する規制強化
医療従事者の過度な残業や休日出勤を防止するため、勤務時間の上限設定や休暇取得のルールを厳格化します。

・診療報酬制度の見直し
不妊治療における診療報酬を増額し、医師やスタッフの収入を向上させることで、長時間労働への依存を軽減します。

・働きやすい職場環境の指針策定
不妊治療クリニックにおける休憩時間の確保や職場内保育所の設置推進など、働きやすい環境を整えるための具体的なガイドラインを策定します。

 

国民全体で支える不妊治療

待ち時間の問題は、患者さんと医療従事者の双方が向き合わなければ解決しません。

社会全体で支えるべき課題です。

当サイトでは、国や自治体が積極的に関与することで、患者さんとクリニック双方の満足度が高まり、「患者さんが安心して治療を受けられる環境」と「スタッフが働きやすい職場」を両立させられる未来を、実現出来る事から考えていきたいと思います。