【コラム】卵子凍結とは?未来を選ぶための技術
近年、芸能人が「卵子凍結」を行ったというニュースが話題になり、多くの女性たちの注目を集めています。ライフプランや健康状態に合わせて「妊娠するタイミング」を自分で選べる時代が訪れつつある中、卵子凍結はその選択肢の一つとして広まりつつあります。
本コラムでは、卵子凍結の基本的な仕組みと技術の進歩、自治体による支援の現状や今後の方向性について解説します。
卵子凍結とは?
卵子凍結は、女性が採取した卵子を凍結保存することで、将来必要なタイミングで妊娠を目指せる技術です。これは主に以下の目的で行われます。
●がん治療などの医療的理由
抗がん剤治療や放射線治療の前に卵子を保存し、治療後の妊娠の可能性を残す。
●社会的理由(ソーシャルフリーズ)
キャリア形成や経済的安定を優先したい女性が、妊娠のタイミングを後にするために利用。
技術の進歩
卵子凍結技術は、この数十年で大きく進歩しました。特に注目すべき点は「急速凍結法(バイトリフィケーション)」の登場です。
●急速凍結法
卵子を超低温(-196℃)で急速に凍結し、細胞内に氷の結晶ができるのを防ぎます。この方法により、解凍後の卵子の生存率が飛躍的に向上し、妊娠率も大幅に改善しました。
現在の技術では、卵子の保存期間が10年以上になる場合でも、品質の劣化がほとんど見られないと言われています。これにより、女性がライフプランに合わせて自由に妊娠時期を選べる選択肢が現実のものとなっています。
卵子凍結に対する自治体の支援
東京都では、2023年より「卵子凍結助成事業」を開始しました。この制度は、以下の条件を満たす女性に助成金を提供するものです。
●都内在住であること
●一定の年齢制限(例:30歳から39歳)を満たしていること
●医療機関での適切な診断を受けた後に申請を行うこと
このような助成制度は、卵子凍結の高額な費用(1回あたり30万円~50万円)が課題となっている中で、女性たちが選択肢を持つための大きな支援となっています。
全国的な普及への課題と方策
<課題>
①費用の高さ
卵子凍結には初期費用のほか、保存の維持費用も必要です。
②情報の不足
技術や費用、リスクについての情報が十分に周知されていない。
③医療機関の地域差
卵子凍結を実施できる医療機関が都市部に集中しており、地方では選択肢が限られている。
<方策>
①自治体による助成制度の拡充
東京都のように自治体が先頭に立って助成金を提供することで、費用負担を軽減。これを全国の自治体に広げることが重要です。
②周知・教育活動
卵子凍結のリスクやメリットについて、自治体や医療機関が中心となり、講演会やオンライン情報セッションを実施。
③医療機関へのインセンティブ提供
地方での卵子凍結サービスの拡大を目的に、医療機関への支援金や設備投資の補助を行う。
④企業との連携
一部の企業では、従業員向けに卵子凍結の費用を補助する制度を導入しています。自治体と企業が連携し、支援制度を拡充することで女性の選択肢を広げることが可能です。
今後の方向性
卵子凍結は、女性が自分らしい生き方を選択するための重要な技術です。全国で自治体が積極的に助成制度を導入し、女性の健康とライフプランを支援する環境を整えることが必要不可欠です。
一人ひとりが自分の未来を選ぶために、技術の進歩と自治体のサポートが手を取り合い、新しい社会の形を築いていくことが期待されます。卵子凍結がより身近で現実的な選択肢となる未来に向けて、私たちも情報発信を続けていきます。